「危ないな。もう俺が居るんだし自転車は止めれば?」


『もう俺が居るんだし』
『もう俺が居るんだし』
『もう俺が居るんだし』
『もう俺が居るんだし』



その言葉が耳から全身を駆け巡り、私の全血液を沸騰させる。

いやいや。違う。こんな言葉ぐらいでいちいち騒いでたら体が持たない。


「一応修理出してみるよ。おばあちゃんに買ってもらったばっかだし。……ライトはパクられたけど」


「散々じゃん。俺が居ない時は乗るなよ」


「……はいはーい」


保護者みたいな口振りなんだけど、いちいち格好いいから質が悪い。



「あとドラガンさんは遠慮ない奴だから気を使わなくてもいいから」


「あ――……。昨日の、聞こえてた? 教養が無い人は変わった名前をつけたがるって古典を引用してたやつ」


「うん。言い返そうと思ったら結愛がサラッと言ってたから格好良かったよ」