気のせいでなければ後ろから足音がする。

気のせいでなければ、カランコロン響く下駄の音が。


『二つの足音や下駄の音に、革靴の足音が?』


不意に光の言葉が思い出された。


カラン…… コロン……


今度こそガチじゃないだろうか。

足音は、心なしか私の歩調と同じな気がする。



嫌だな。自意識過剰かもしれない。



やっぱり自転車で駆け抜けよう。

車だって少ない通りだし。


そう思い、自転車に跨がろうとした時だった。


み゛ゃあ゛――


「?」


猫の鳴き声と言うには余りに低重音すぎる。

猫みたいな奴の鳴き声の方が猫らしい声だ。


み゛ゃお゛ー


猫の声は一段と夜に響く。


仕方なくキョロキョロ見渡せば、自転車のすぐ横の低い塀に猫がいた。


白と黒のぶち模様の、ピンクの首輪が可愛い……目付きの悪い猫。


首輪にサボテンの迷い札がついている。