「何で良い匂いがするの。太陽みたいな」
悔しくてガジガジ噛むと、猫みたいな奴はニコニコ嬉しそうだ。
「だって俺、君が渡り廊下を走るのを此処でゴロゴロしながら見てるんだよ。今度はちゃんとお昼においでよ」
「……うん。光がいない時に」
親友の光にも内緒にしたいから。
「でもちょっと残念」
あーあ。とゴロンと転がる。
「可愛いなって思ってた桐原さんの可愛いさは、皇汰くんのものだったんだー」
「あいつは受け取らないけどね」
「皇汰くんに向けての可愛いを、俺が感じちゃってごめんね?」
ペロリと舌を出したが、悪いなんて思っていない顔だった。
寧ろ少し悲しげな。
「それより胸ポケット、チカチカ光ってるよ」
ゴロゴロ転がりながら、私に近づくと胸元を指差した。
ポケットの中にあった携帯にメールが来ていたようだ。
『いま、どこ?』