薄い茶色のアーモンド・アイが見開く。

無造作に伸ばされたあちこちに跳ねた黒髪。

腕捲りされた両手には、鈴を握りしめている。


「君、毎日渡り廊下を全力疾走してる子じゃん」


シャラン

鈴を放り投げると私に駆け寄って、手を差しのべる。

ふわふわした、掴めないような笑顔。



「俺の秘密基地、見つけちゃったんだ?」


「渡り廊下って。秘密基地って」


色々聞きたい事はあったけど、取り合えず手を取って、屋上に足を踏み入れた。


「俺、君を知ってるよ。桐原結愛ちゃん」

「……まさか屋上の君に知られていたとは」

私が呆然とそう言うと、手をグーにして口元を抑えてクスクス笑う。