切なげに首をかしげられると、苦しい。
全力で首を振りたくなる。
でも。私は……。
「俺、あったかい雰囲気の花忘荘が好きだよ。息苦しくないから好き。
こんな気持ち、知らなかったんだ。
教えてくれたのは、いつも一生懸命に渡り廊下を走る君だよ。結愛」
壁から降りてきた葵は、土足で縁側に上がる。
「まだまだ教えてよ。結愛。隣で」
懇願されるように言われると胸が甘く痛んだ。
「葵……」
「説得は皇汰たちに任せて、結愛は俺と此処から出よう」
私の腕を捕み、走りだそうとする葵に、ゆっくり腕を払い除ける。
「結愛?」
「お婆ちゃんは私が説得するよ」
私が今度は葵の腕を掴み、玄関へと引きずる。
「岸六田先生も」
そう声をかけると、目を丸くしながらも頷いてくれた。



