そっと目に手が重なって、まぶたを閉じさせられた。


すぐ側に葵の吐息を感じたと思ったら、


――ゆっくりと唇が重なった。



啄むような優しい唇は暖かくて、カサカサしていて。


それが葵だと思うと嫌だなんて思わなかった。



「――好き。好きだよ、結愛」



抱き締められた懐の中は、葵の匂いで溢れていて。


幸せだと思ってしまった。


皇汰に自分から好きだと言うのに迷いがあって、カンガン押していけなくて、――寄り道ばかりしていた。



迷いがあったのは、あの日。


屋上で葵と会ってしまったからだ。


そんな事、私はとっくに理解していたくせに。