「そう? 俺にはずっと結愛はお姫様だったけど?」

「……はは」

「俺が隣に居たいけど、さっきあんな悲しい顔をするならって追いかけさせちゃった」


髪を撫でていた手が、私の涙を掬い上げる。

和服の葵は、王子様ではないけど絵巻に登場してきそうで素敵で。


にっこり笑うと、溜まっていた涙がまた溢れてしまった。


「うん。俺は皇汰くんみたいに結愛に好きになってもらえるようなモノ何もないけどさ」


伝う涙を葵がゆっくりと舐めて、笑顔を向けてきた。


「俺は、桐原さんが好きだよ」

「桐原結愛が、ずっとずっと好きだった」


その優しいアーモンド・アイに吸い込まれていく。

突然の告白に目を見開いた私は、ただただ葵を見上げるだけ。