「1ヶ月前に痴漢にあいかけたの、俺の姉なんだわ」
とぼとぼと自転車を押しながら歩くと、皇汰がそう言った。
「若社長が助けたから触られてもないらしいんだけどさ」
深いため息を吐く皇汰は、どっちが兄だか姉だか分からない。
「皇汰に似てたらお姉さんも綺麗そうだしねぇ」
大変だったね、と呟くと眉間のシワが深くなった。
「姉ちゃんはあの歳になってもふわーっていうかは呑気というか。結愛の真逆。本当に心配しかできねー」
「うわ。シスコーン」
意外や意外。
皇汰がちょっと熱くお姉さんの事を話してる。
私と真逆とか失礼な事言ってるけど。
いいなー。お姉さんの前ではこんなちょっと無邪気な皇汰なのかな。
「だから同じアパートの皆も心配してさ。最近じゃ一人で夜道を歩く女の人が居ないか見回りまでしてるよ」
「それって逆に不審者じゃない?」
「皆、顔だけは良いから」
顔だけは……。
まだ会った事ないけど、ますます気になるな。
「そういや、私もアパートの人たちに挨拶したいんだけど」



