そんな葵が……どうしようもなく愛しかった。
夜中に作ったやつだからパサパサで美味しくないはずのオニギリを。
シーチキンの油で濡れた海苔で巻いたオニギリを。
落ちて汚いオニギリを。
こんなに嬉しそうに食べてくれて。
「お腹、壊してもしらないよ」
そう私が笑ったら、「壊さないよ」と葵も笑った。
「んだよ。固くて中はべちょべちょで美味しくないじゃん」
そう言われ振り返ると、皇汰が壁にぶつかったオニギリを食べていた。
「これ、胃薬要るわ。やば、もう痛くなってきた」
「皇汰!」
「結愛は胃薬貰ってきてよ」
岸六田先生と私を談話室から追い出しながら、皇汰が静かに言った。
沸々と怒りが目を輝かせてるのが分かる。
「皇汰! 食べ物を粗末にしたそいつらを絶対に許すなよ!」
「ああ。大人の平和的話し合いとそれは別の話だから」
皇汰は不適に笑うと、談話室の扉を閉めた。



