「先生に手ぇ上げんじゃねーよ!」
下から抉るような頭突きをお見舞いすると、おじさんは胸を押さえて倒れ込む。
手から紙袋が飛んでいって紙袋からオニギリがコロコロと床に飛び散った。
そのまま先生の元へ駈け戻り、入り口のドアの方へ距離を取る。
「先生、話が通じない人たちだから、離れてて」
「でも、桐原さんのオニギリがっ」
先生が二人の方を指差すと、おばさんがオニギリを踏みつけようと高級な着物から足を出して振り上げた時だった。
間に合わないと傍観していた私の代わりに、葵が飛び出して手を伸ばした。
大事な……大事な手を。
あんな綺麗な絵を描く手。
覗き魔にも使わなかった手が。
「葵さん!」
おばさんの顔が真っ青になる。



