「おや、失礼。小学生の時に君が書道を止めて以来ですねー。変わらない可愛らしさで」


……。

このおじさん、うちのお婆ちゃんの書道の生徒なのかな?
全く覚えはないけど。


「私は葉瀬川 唯一(はせがわ ゆいいつ)。甥っ子が桐原さんの書道教室に通ってたんですよー」

甥っ子か。じゃあ教室でこの人を見かけてなくても不思議はないか。

まだ疑わしげにじろじろ見ていると、葉瀬川さんは思い付いたように私に尋ねてきた。


「あの子も確か1日だけ書道教室に居たんだよねー。葵が此処に来ていないか探してるんだけど」


「……葵?」


「誰か匿ってないかなー、なんて思ってる」


表情も変えずに淡々と言うけど、私の知ってる葵は一人しか居ない。


「何してんだよ。葉瀬川さん」