岸六田先生は、伏し目がちで澄ました顔で昨日何もなかったような素振りだった。 だだ、度が入ってなさそうな黒縁の眼鏡をかけている。 岸六田先生はキスされた後、どうしたんだろう。 モテそうな、あんな駆け引きなんてあしらい慣れてそうだけど。 「ああ……皇汰くん」 先生が小さく呟いた先には、窓の外、中庭で若社長とベンチで日向ぼっこしている姿だった。 この教室は、息が詰まりそう。 静かで、寂しくて、冷たい夜の中にいるみたい。 だから私は逃げ出したくて、たこ焼きパンまで全力で向かうのかもしれない。