復讐。【更新中】

ガンッ!!

 何?何が起こったの?

 突然私の背中に激痛が走った。
ひんやりと冷たいコンクリートの壁にごりごりと押しつけられる。
しっかりと握られた手首が壁に擦れて痛い。

 顔をあげると恨めしそうに澪汰が私を睨んでいた。
じりじりと壁と澪汰の間に挟まれて逃げ場が無くなる。

 怖い。

「…なんで。」

 今まで黙っていた澪汰が突然口を開いた。
その静かな迫力に完全に怖気づいて言葉が出てこない。

「今の電話男だろ?微かに聞こえたんだよ、男の声が。俺がいるのに、お前は俺じゃなきゃ駄目なんだろ?」

 ぎゅうううう。
手の力が急に強まった。
痛い痛い痛い。

 男性の握力に逆らえない私の手首の骨がぎしぎしと軋む。
短い爪が皮膚から肉に食い込んでくる。
擦れた手の甲からは血がにじむ。

_助けて!!

 頭の中で思いっきり叫んでみても実際には何も言えない。
まわりを見回しても人なんて誰もいない。
さっきの政治家のポスターが私を嘲笑っているだけだ。

 ねえ、あなたは誰なの?私の知っている澪汰じゃない。
澪汰はこんなことしない。
あなたは、澪汰じゃない。

 私は脳内で現実を否定する。
でも前を見れば紛れもなく澪汰が映っていて。

 もう脳みそがぐちゃぐちゃだ。
全く機能していない。

 私が軽いパニック状態に陥っていると、突然温もりに包まれた。
 
 背中の激痛と手首の崩壊から解放された。

「れい…た?」

 目の前にはざらざらとしたコートの感触。

 私は澪汰に抱きしめられていた。
伝わる体の温もりと澪汰の香りに怒りと恐怖とがさーっと引いて行った。 

 ああ、やっぱり澪汰は澪汰だ。
 
 私も澪汰の背中に両手を回した。

「結衣、これでずっと一緒に居られるよ。」

 背筋がぞくぞくと逆立つほどの甘い声。
一気に力が抜けていく。

「な、に、れ…い、た?」

 突然私を襲った脇腹の痛み。
何かを刺しこまれたの?
なに?わからない。

「ぁ、あぁ、ぃたい、澪…」

 次に激しい電流に貫かれた。ナイフで裂かれるような感覚にも似ている。
びりびりと体が急速に麻痺していく。
四肢が言うことを聞かない。
まるで自分が自分で無くなっていくような錯覚に陥る。

 まともに立っていることが出来ない。
自分が何を発しているのかもわからない。

 澪汰。助けて澪汰。

 私は勢いよく地面に倒れこんだ。
目の前に固い地面が迫ってくるがどうすることも出来ない。
半開きの口から生暖かい涎が垂れる。

 私はそのまま地面に叩き付けられ、意識を手放した。