復讐。【更新中】

_私が異常に気がつきはじめたのは、今から約1カ月ちょっと前の事だ。

「ねえねえ、明日はクリスマスだねー!」

「え、そうだっけ。」

 12月下旬。
空気が冷え込む中、世はすっかりクリスマスムードで浮かれていた。
街には赤、緑、白の鮮やかな電飾がうるさいくらいに光っている。
一歩店に入れば『サンタさんにおねだりするならコレ!』『クリスマスにはケーキを食べよう!』などのポップが、でかでかと飾られている。

 街のシンボル的なクリスマスツリーがある駅前広場はというと、毎年の様にカップルでにぎわっていた。
人目も気にせず抱き合う人。
婚約指輪だろうか?小さな箱をプレゼントする人。
いろんな人の物語が、あちこちで生まれてはいわゆるクリスマスムードというやつを生産していく。

 鼻につく様に甘ったるい雰囲気。眩暈のする明るい街。

 そんな人たちの中に、私たちもいた。

「もう、本当はわかってるくせに。めんどくさいからいちいち嘘つかないの!」

「ごめん。」

 私が冗談っぽくきつめに言うと、しょんぼりとして真っ黒なマフラーに顔をうずめる澪汰。
その隙間から長いまつげがぱちぱちと瞬く。

 その顔は見入ってしまうほどに純粋で。もっと意地悪したくなる。
でも、かわいそうだから

「あ、別に怒ったわけじゃないからね。ほら、顔だしなよ。」

「…うん。」

 微かに頷いた澪汰は、少し角ばった長い指でマフラーをずらした。
冷たい風に触れられて、ほんのり肌が赤い。

 澪汰は写真が嫌いな小学生のようにぎこちない笑顔で笑った。

 それはとても不思議な笑顔。
でも、それが澪汰にとって精一杯の笑顔であることを私は知っている。

 無口で、不器用で、可愛げがあって、優しくて。
私はそんな澪汰が大好き。

…だった。