復讐。【更新中】

「「いただきます。」」

 うつむき気味に挨拶をして、私はハンバーグに手をつけた。
スッと簡単に箸を通し、口の中に入れるとほろほろと崩れていく。
大根おろしのさっぱりとした味付けがなんとも好みだった。

「美味しい。」

 思わず言葉が漏れた。
その一言を聞いた澪汰の表情がぱっと明るくなった。
そしてあのぎこちない笑顔で笑う。
私が好きだったあの頃と変わらない笑顔。

「結衣が喜んでくれてよかった。」

 そうとだけ呟いてまた食事に視線を戻す澪汰。
 
 私はその姿から目が離せなかった。
“私が好きな澪汰”の姿は今確かに目の前に居るのに、“本当の澪汰”はどこにも居ない気がした。

 そう思うとたまらなく悲しくなる。
狂気に満ちた澪汰の裏には、確かにあの頃の澪汰が存在しているのだ。

 どうして乱暴なことをするの?
どうして優しくするの?

 澪汰、あなたは誰なの?

 わからない。わからないよ。
教えてよ澪汰。私はまだきっと、あなたの事____

「澪汰、好き。」

 そう思っていたいんだよ。
だからもうこんなこと辞めようよ。
本当は澪汰の事嫌いになりたくないんだよ。

「…結衣?」

 ぴたりと箸を動かす手が止まった。
無音の時が流れる。空気だけが穏やかに空間を浮遊する。

 澪汰はゆっくりと立ち上がって、私の背後にしゃがんだ。
背後にまわられると、無意識に身構えてしまう。
肩に力が入り、緊張が走る。

 でも、その必要は全く無かった。
背中いっぱいに広がる心地よい暖かさ。
ゆるゆると全身の力が和らいでいく。

 私は澪汰に抱きしめられていた。
私の首筋辺りに吐息がかかる。

「俺も結衣の事、大好きだよ。なのに、ごめん。ごめんな。結衣、ごめん。」

 抱きしめる腕がぎゅと強くなった。
私のうなじに顔をうずめながら、何度も謝る澪汰。
その大きな体はわずかに震えていた。

 澪汰、どうして謝るの?
どうして泣いているの?

 私の首もとがじんわりと生ぬるい液体で濡れていくのがわかる。

まるで子供の様な弱々しい姿。