練習終了後、藤堂先生に私との練習試合を申し出た桃弥。みんなが見守る中、2人で向かい合う。

 桃弥との練習試合は何年ぶりだろう。
 面をつけた桃弥、私のことは棒アイスにしか見えてないのかも。

 特別ルール、5分間1本勝負。
 有効打突を1本先取したものの勝ち。

 主審は藤堂先生だ。

「始め」

「とりゃー」

 桃弥が声をあげ、私を威嚇する。
 先に仕掛けてきたのは桃弥。竹刀が激しくぶつかり合う音がする。互いの竹刀をクロスさせたままにらみ合う目と目。

 桃弥はしきりに胴や小手を狙ってくる。

 女だからって、なめないで。
 アイスを奢ってもらうのは、私の方だ。

 竹刀を振り上げ、桃弥の面を狙う。
 ほぼ同時に、桃弥の竹刀は私の胴を打ち突けた。

 ◇

 ―午後9時―

 公民館から徒歩2分の距離にあるコンビニの前。

「バニラがいい」

「ちぇっ、何で俺が奢んなきゃなんねーの?藤堂先生は女に甘いんだから。ぜってぇ、胴ありだったはずだ」

「面ありだよ。主審に異議申し立てるなんて、すでに負けてる」

「ばーか、俺はわざと負けてやったんだよ」

 桃弥はバニラアイスを2本掴むと、レジに持っていき財布からジャラジャラと小銭を取り出した。

「ゴチになりまーす。リベンジしたいならいつでも受けて立つよ。桃弥が土下座でお願いするならね」

「生意気な。次は必ず勝つからな」