『夜10時、あの公園で』






春川の丁寧で繊細な文字で、小さく書かれた言葉。




その意味を理解して、俺は顔を上げた。





「………はる、かわ」





約一年半ぶりに間近で見た春川の顔は、すこし大人びていた。




窓から射し込む光を受けて、長い睫毛が白い頬に影を落としている。




ふっくらとした小さな桃色の唇が、かすかに開いた。






「………先生」






静かな声が、周りの喧噪を破って俺の耳に染みこんでくる。





俺は無意識のうちに「わかった」と頷いた。






「あとで、な」






春川は微笑みを浮かべて、会釈をして去っていった。