風がさらった恋心。




どうして一岡くんまで、私からいつも通りを奪うの。



眉を下げて、何故だか困ったような顔して、一岡くんは笑った。

その挨拶にさっきの三島くんみたいに返そうと思ったのに、口が開かない。


喉の奥がきゅってなって、開いたとしても、声になる自信がなかった。



もしかして昨日のこと気にしてる?

でもこの流れで挨拶しないわけにはいかないから、無理させてるのかな。


だから一岡くんは、そんな顔をするの?


大会で沢山の好成績を残してきたんだから、もっと自信に満ち溢れてても良いはずなのに、控えめでどこか自信なさげな雰囲気が彼を纏う。

それが君と私の世界の間にあるはずの境界線を少しだけあやふやにする。



昨日一岡くんと話して、何となくそんなことを思ったんだ。

だけど多分それって、私にもしかしたらそっちの世界にいけるかもって錯覚させる、ものすごく恐ろしいこと。





「……おはよ、一岡くん」