男のギター弾きは、こうじゃないでしょ。 男の腕が“彼女”を抱いて歌わせる。 “彼女”の音色に、男の歌声が乗っかる。 そこには、支配的な匂いがただよう。 不自由そうだね。 痛々しいんだよね。 弘樹も、そうだ。 弘樹のギターは、弘樹の焦りや怒り、若さと性欲に忠実だ。 弘樹は“彼女”を服従させている。 その激しさが、腹立たしいくらい、芸術的。 あたしは嫉妬する。 その嫉妬は、どこに向けたものなんだろう?