すきの、チカラ


だってもし、遠野さんが、葉山くんに、「すき」って言ったら。


早い者勝ちだけのわたしは、とうてい、かなわないよ。



「望月、聞いてる?」



ふいに、葉山くんに顔をのぞきこまれて、びくっと肩がはねた。


こくこく、首をふって、あわててとりつくろう。



「あ、えと、朝練!!する話、だよね!?うん、えっと・・・頑張って、ね・・・っ」



無理やり笑顔を浮かべて言うと、葉山くんが、目を丸くした。


そのあと、すこし、スネたような表情になる。



「・・・葉山、くん?」



初めて見る顔に、おどろいて、足を止めた。



「・・・やっぱ聞いてなかっただろ」



軽く。本当に軽く、寄せるように肩をぶつけてきて、葉山くんは言った。



「え・・・えっ」

「さっきの・・・誘ったつもりだったんだけど」

「えっ!?」

「だから・・・顧問にカギもらえるように交渉したから、ふたりで朝練、しねーかなって。望月のこと、誘ったんだけど」



ぼうぜんと立ったまま、葉山くんを見つめる。