涎が出るほど抱き締めて




「じゃ、そーゆーことなんで」


長い足をベランダにかけ、立ち上がる。

ぐらりと揺れる視界、見える高さ。



「まっ…ちょ、な、んぎゃぁあああああああ」



落ちた。


まっさかさまとかじゃなくて体制はそのままでも、風力ヤバイ。


腹のそこから叫んだ。


タトン、とあり得ない軽さの音で着地に成功。

衝撃も全くない。


「は…あ、は…」


息を目一杯吸って、叫んだぶんを取り返した。

家の裏の庭に落ちたみたいだ。

足元は草っぱらだし。



「晴ちゃん」



不意に呼び掛けられた。



「君を食べるのは、やめたよ」


「なんで…」



「晴ちゃんの笑い声が聞いてみたくなったんだ」



どくんと、心臓が高鳴る。


何このひと。

…恥ずかしいんだけど。



「気づいた?私を食べてって言ってたときに笑ってたんだよ、晴ちゃん」


「なっ…」


「だから、今度は笑い声を聞いてみたくなったんだ」