涎が出るほど抱き締めて


親戚はいないし、いても連絡のとりようがないしで、本当に困り果てた。

必死でかけ集めたものの、借金は雪だるま式に増えていく。


生命保険か、風俗か。


そう聞かれた私は、どっちも拒否した。

死にたくなかった、堕ちたくなかった。


バイトなどで必死に働いたものの、いつまでも返さない私に業を煮やしたのか、向こうは強行手段に出た。


暴力は警察が煩いからやらない。


主に無言電話の攻撃だった。


出れば無言の沈黙が続くそれは、尋常な量じゃない。

一日平均250件。

毎度毎度電話番号も違い、拒否の費用もないのだ。

切っても切っても止まぬそれに、意外とストレスを感じた。

電話の音が、だめになる。

ルルル、となる音程に、心臓がどくんと騒ぎ出す。

神経が、感情が、嫌だ嫌だとざわめく。

堪らなくなった私は、電話のコンセントを切った。


ほぼ衝動的である。