少し、顔を歪めたアオイ様。 私はそれに、気づかないふりをした。 「……アオイだ。」 あ、やっぱり、アオイ様なんだ……。 「アオイ、様……。」 「アオイでいい。」 「……アオイ。」 顔を上げて、ソッと声に出した。 初めて呼ぶ、彼の名前。 その瞬間、重なった視線。 吸い込まれるような、青い瞳。 二重の瞼が、余計にそれを目立たせていた。 とても、綺麗だと思った。 あまりにも綺麗すぎて、何も言葉が出なかった。 アオイも、何も話さなかった。