マンゴーカラーの容器に入った美容液。

スポイトタイプのそれは、適量を手に取り肌に馴染ませると表示されている。

保湿は勿論のこと、美白や集中補修効果もあるらしい。


俺はそれを数滴手に取り、指先で優しく彼女の手に馴染ませた。

手に取った時はとろみがある感じなのに、

希和の肌に乗せると、スーッと浸透していく。

まるで、ゴクゴク飲み込んでいるみたいに。

べたつかず爽やかな香りで、しかも、明らかにワントーン明るくなった。


「凄いな、これ」


ネーミングセンスはいまいちだが、機能性は十分だな。


エッセンスだが、全身に使えると表示されている為、

俺は躊躇わず手のひらにたっぷりと取った。

これで、肌の乾燥が少しはマシになるといいんだが……。


俺は少しずつ指先に付け、希和の顔に馴染ませた。

そして最後は、俺の手のひらで包み込むようにハンドプレスした、その時。


「ッ!?」


希和の眉間がピクッと動いた。


「希和、…………希和、俺が分かるか?」


恐る恐る声を掛けてみるものの、反応はない。

やはり、俺の見間違いなのだろうか?

フゥ~と大きな溜息を一つ吐いた俺は、再び彼女の頬に触れた、次の瞬間。

彼女の顔が僅かに動いた。


「希和?!…………希和、俺の声が聞こえるか?」


俺はそっと優しく彼女の頬を叩くように触れると、

さっきよりもハッキリと反応を示した。

眉間にしわを寄せ、今にも瞼が開きそうだ。

逸る気持ちをグッと堪え、彼女の手をそっと握る。


ゆっくりでいい。

俺はここにいるから。



静かに様子を見守ってみるものの、やはり反応がないと諦めかけた時だった。

俺の手の中で、彼女の手がピクピクッと動いた。