日賀國物語

「久しぶりに来たわ…」

この蔵に来るのは約1年ぶりだった。
車で来れない道だし遠いので、あまり来ることがない。

ガラガラと鍵の掛かった引き戸を開け、中へと入る。

蔵と言ってもただ無造作に書物が置いてあるのではなく、部屋が幾つかあってその中に本棚やショーケースがある。

三年前に改造したのだ。

引き戸を開けると大きな水瓶がお出迎えしてくれる。

水瓶は蓋が閉じられていて、中には大昔の水と空気が入っているらしい。

「大昔って言うけど、一体どの時代のなのかしら」

靴を脱いで上がると、そのまま本棚の方へと進む。