おじいちゃんに連れられて、あたしは家を出る。






昨日の同じ道を、おじいちゃんに合わせて昨日よりもゆっくりと歩き、坂の入り口に辿り着くと、おじいちゃんが振り向いた。






「この坂は、比良坂(ひらさか)という。

ここを登っていくと、火村の家がある」






あたしは「はい」と頷きながら、すでに知った道だということが表情で悟られないように、必死で顔をひきしめた。






比良坂を登り切ると、あの大きな家が現れる。




明るいところで見ると、昨日見たときよりもずっと、圧迫感を感じるほどに大きく見えた。






「火村の家だ。


連絡はしてあるから、入るぞ」






おじいちゃんはチャイムも鳴らさずに、立派な門の扉を開けて中に入っていった。




あたしは驚きつつも、慌てておじいちゃんの背中を追いかける。






田舎は玄関に鍵がない、とか聞いたことがあるけど、チャイムもないのかな……。




知らない人の家に勝手に入るみたいで、変な感じだ。