卍
「美夜、ちょっといいか」
朝食の後片付けをしていると、おじいちゃんが声をかけてきた。
あたしは「はい」と頷き、濡れた手をタオルで拭いて、おじちゃんに向き直る。
「今日は、火村の家へご挨拶に伺うぞ」
「はい……えと、ほむら?」
「あぁ、火の村と書いて、ほむらだ。
この迦具村で一番大きな家で、代々村長をしとる。
礼を欠かんよう、気をつけてくれよ」
「あ、はい」
火の村、と聞いて、昨日のことを思い出した。
こっそり鎮守の森へ行く途中、坂の上にあった大きな家の表札に、『火村』と書いてあった。
あの家は、村長さんのおうちだったんだ………。