卍
「ーーーうわぁ……すごい」
車のドアを開けた瞬間、あたしは、感嘆の声を上げた。
ふわりと身体を包む、濃い緑のにおい。
そして、視界いっぱいに広がる山の樹々。
見渡す限りの緑、緑、緑。
深い緑、明るい緑、暗い緑。
あたしは、緑にこんなにもたくさんの種類があるということを、いま初めて知った。
目に映るのは、山の緑と空の青だけ。
迦具村の空は、東京の空よりも、もっともっと色が鮮やかで、ずっとずっと近くにあるように感じた。
谷間にときおり家が建っているのが見えたけど、その間を通る舗装もされていない道路には、人も車も見えない。
なんてきれいな景色なんだろう。



