鎮守の森に鬼火が灯る

ついさっきまでほとんど夢見心地で森の奥へと足を踏み出していたあたしは、この男の子を見つけたことで、途端に現実に引き戻された。





おじいちゃんの、鎮守の森に入ってはいけない、という言葉を急に思い出して、あたしは引き返そうと、踵を返しかけた。





そのとき。







「――――そろそろ来るだろうと思っていた」







森の奥から、囁くような、それでもはっきりと耳に染みこむような声が、聞こえてきた。






あたしは驚いて視線を戻す。





後ろ姿の男の子が、ゆっくりと振り向いた。








「………待っていたんだ、君を」








静かな声が、闇に沈む森の中を通り抜けて、あたしの鼓膜を揺らした。