家に入り、昨日と同じくリビングに行く。
今回は明とひかりも一緒だ。
「失礼します。お母様、昨日伺った鎖辺 明日香です」
昨日と同じ場所に横たわっていた若いお母さん。
「……今度はなに…。私に…私の息子にかまわないでよ…」
泣きそうな声で吐き捨てる。
「もう……いや…。来ないでよ…」
うずくまるように、耳を塞ぐ。
言葉をかけようと近づこうとしたら
「やめたほうがいい」
と、明が私を止めた。
「ひかり、何が見える」
明が続けてひかりに質問した。
ひかりは一度目をつむり、
「大切な人を失った悲しみ…。でも、それだけじゃないわ…」
そう、答えた。
ひかりは、人の感情を誰よりも知ることができる。
視える…と表現した人もいた、特別な力。
本人は鬱陶しそうにこんな能力いらないと呟いていた。
「後悔…懺悔…何かから逃れたい気持ちでいっぱいのように見える」
ゆっくりと、目を開ける。
そして、隣にいる明に視線を送る。
明は、なにかを感じ取ったかのように
「今日は、ここまでにしようか。また明日来よう。明日なら…聞いてくれるから」
と言って私を振り向かせ、前へと押した。