しばし康晴はそれを見つめていたが、そっと腕時計を外し、ズボンのポケットに入れた。 ――携帯電話も使えない。さらに腕時計もおかしな動きをしてしまい、今が何時かさえわからない。 分厚い雲が立ち込めたような重苦しい雰囲気が漂う。 「よし!」とそれを打ち払うように有川が大きな声をあげた。 「この壁をのぼって、おれが助けを呼んでくるから!」 有川は、シャツの袖をまくりあげ、白い壁をのぼろうとした。 しかし、白い壁には、とっかかりになるような部分がなにもない。