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「……………ばいいんだ。」
あれからしばらくその場で休んだ。
うずくまっている麻耶から突如聞こえた声は、本人のものとは思えないほど【黒い声】だった。
「麻耶?」
「みんな、死ねばいいんだ…………!!」
麻耶はその場から立ち上がったかと思えば、あたしの方へ歩いてきて、おもむろにあたしの首を掴んできた。
麻耶とあたしの距離は結構あったはずなのに、それが一瞬でゼロになったのだ。
背が床につき、麻耶があたしにまたがった。
「麻耶……………!!」
「消えろ……………!!みんなみんなみんなみんな死ねばいいんだ!!」
首を締める力は段々強くなっていく。
麻耶のような少女がなせることではないはずだ。
きっと、この帽子のせいだろう。
麻耶の今の顔は、歪んでいた。
それは、今まで溜め込んでいたものがすべて解き放たれたかのような欲望の顔。
「ど、して!いつも!いつも!私ばかり……………!!」
時折口から出る言葉は、麻耶の本音のようにも聞こえた。
「1人だけ幸せな生活して……………!もう我慢できない!!壊して、やる……!」
そして、麻耶はあたしにニタリとした笑みを向けた。
……………っ、このままじゃ、あたしも、麻耶も危ない!!
あたしは苦しい息の中、必死で声を出そうと試みた。
「……………や……………麻耶………!」
何度も口にする。その親友の名を。



