あたしはいつものように麻耶を抱きしめて、頭を撫でる。
麻耶はあたしの肩に顔をうずめた。
しばらくそうしていると、麻耶は落ち着きを取り戻したようだ。
「………ごめん。閖。」
「何言ってんだよ。いつものことじゃんか。」
「そうだね…………」
麻耶は一度目を閉じて、ゆっくりと目を開けた。
その顔には、笑みが浮かんでいた。
「うん、ありがとう。閖。本当、毎回ごめんね。」
「平気だって。もう慣れたし………って、麻耶?その帽子なに?」
麻耶から体を離すとき、あたしは見た。
先程まではなかった、謎の赤黒いベレー帽のようなものが麻耶の頭に乗っていた。
しかもそれにはこうもりの羽のようなものまでついていて、どう考えても普通じゃないことがわかる。
麻耶はあたしの言葉を不思議に思ったのか、自分の頭の上の帽子を何度も触っている。
「え、帽子?でもこれ、被った覚えないし、それに…………とれないよ?」
「……………は?とれないってことはないでしょ。いくら色と飾りがおかしいからって。」
「でも何回やってもとれないの!やだよ、これ、なんなの?怖いよぉ………!」
やばい。麻耶が怯えてきてる。
それにしてもこの帽子、どこかで見たことあるような……………ないような。
記憶が曖昧でいまいちよくわからないけど、でもたしかこれは……………。
あたしの記憶が正しければ、これはある本の中に出てくる【悪魔の卵】の形にそっくりだ。
現実離れしてるけど、このゲーム自体が現実離れしてるから可能性もゼロじゃない。



