「麻耶、あたしが敵を引き付けるからそのブレザーのポケットに入ってる手榴弾を敵に投げて。」
「でもそれじゃぁ、閖の負担が…………」
「いいから。頼んだからな?」
あたしは物陰から飛び出して、敵の姿を確認するべく敵に目を向けた。
そして、その敵の姿は……………。
「……………早苗?」
早苗、だった……………。
早苗とはたまに話すことがあって、まぁ言うならば仲の良いクラスメイト、という感じだ。
でも、また顔見知りの人に変身するなんて残酷じゃね?
「あ、閖じゃーん!このゲーム楽しんでる?」
……………い、今、話した?
敵が、早苗で話したってこと、だよな?
「もしかして勘違いしてる?早苗は早苗だよ。敵が早苗に化けてるんだよ。早苗がここにいるわけじゃないよ。」
「で、でもさ、キャラは早苗だよね…?」
なんか敵ってやつ抜きにしたら早苗にしか見えないんだけど……………。
なにこれ、再現度高すぎ。
それにあたしが早苗そっくりな敵と話してるからか、麻耶がいつ手榴弾を投げればいいかわからずに戸惑ってしまっている。
あ、なんかごめん……………あはは。
「あ、やっぱりわかりずらいよね。でも早苗はちゃんとわかってるよ?"ここ"にいる早苗は早苗じゃないの。だから、早苗のこと殺していいよ?」
「殺す、なんて……………」
早苗を殺すなんて、できるわけがない。
健くんだって本当は殺すことなんてできなかった。
杖から光線が放たれなければ、あたしは今頃敵に殺されていただろう。
でも今回、杖は麻耶が持っている。
それに手榴弾も。
つまり今あたしは何の武器も持っていない。
だから、麻耶に早苗を殺してもらうしかない……………。
クラスメイトを殺すなんて、二度もしたくないけど、きっとこれからもクラスメイトに化けた敵がたくさん出てくると思う。
だから、今回も、殺さなきゃいけない。
「殺していいんだよ?……………麻耶。」
早苗に言われ、肩をビクッと震わせた。
麻耶はまだ早苗の姿をした敵を殺すことをためらっているようで、手榴弾をぎゅっと手で包んでいる。



