嫉妬のワケがない。

「いやっ、それは違……っ!そっちこそ勘違いすンなよ?!アレはああでも言わねェと、自分の身体を大切にしないんじゃねェかと……」

「へぇ~?心配してくれるんだ?」

「ンなっ……」


 墓穴。

 ダメだ。こいつに何を言ってもダメだ。言ったところで言い負かされちまう。悔しいが……ここは素直に引き下がっておかないと、俺の心の傷が深くなるばかりだ。


「うふふ。いいのよ、もう、何も言わなくて。これでも、私は竜司の気持ち、分かっているから」

「あ?!」

「だから――そろそろ離してくれないかしら?」

「……は?」


 ……。

 幸恵に言われて自分の状況を見ると、俺の頭の中は真っ白になる。

 マジか。俺はずっと壁に手をついて、幸恵を逃がさないようにしていた……。なに、これ。無意識?


「お、おう……」


 慌てて幸恵から距離をおくと、幸恵は微笑みながら「ありがとう」とお礼を言ったのち、俺に背を向けて去っていった。