嫉妬のワケがない。

「でも、よかった……」

「え?」


 幸恵は驚いたような表情を浮かべる。

 ヤバい。幸恵とさっきの男がなんでもないと分かった瞬間、安堵のあまりに思わずそう呟いてしまったことを後悔する。

 これじゃあ、やっぱり俺はさっきの男に嫉妬していて、でも、なんでもないから安心した……って幸恵に思われちまう。

 この俺が嫉妬……しかも幸恵関係でなんて、天地がひっくり返ってもありえないことのはずだから。

 だって、俺達は顔を見合わせりゃあ言い合い喧嘩する仲なんだぞ……?!


「あ、ああ、いや、なんでもねェ」

「……そう」


 本当は俺の言葉……聴こえていたはずのに。俺の考えていること、分かっているはずなのに、幸恵はそれ以上、何も追求してはこなかった。

 代わりに……。


「でも、さっきの言葉、悪くなかったわよ?」

「は?さっきのって……」

「“テメェが他の男と夜を一緒に過ごすとか、イヤなんだよ”」

「なっ!なな、なななっ?!」


 過去にその言葉を吐いた自分を殴りたい。あまりにも恥ずかしすぎる。