「彼女に好意を抱いているのか」と問われたら、俺は即行で首を横に振る。そんなわけはない、と。

 俺には、唯一の家族である大切な妹――美里(みさと)――が1人いて、彼女さえいてくれたらそれでいいと思うほどなのに。

 あの女に構う暇も、あの女に好意を抱くつもりも、最初から無い。

 そもそも、あの女は男をオモチャに見ている節があって、裏表の裏の部分が全く見えねェ。そんな女に、好意を抱く理由が見当たらねェ。

 昔に男と色々あって、男を信じられないという噂を聞いたことがあるが……そんなこと、こっちは知ったこっちゃない。

 まずいち、顔を見合わせただけで言い合い喧嘩になるのに、どこをどう見たら“彼女に好意を抱いている”と思われるのか……その神経を疑う。


「……んァ?」


 日が暮れ始めて間もない頃、風に当たりたくて何気なく道を歩いていたわけだが……前方に、あの女――美島 幸恵(みしま ゆきえ)が立っていた。

 さらさらとなびく金色の髪、透き通るようなエメラルド色の瞳。一見、外国人のように思われがちだが、生まれも育ちも正真正銘、日本(ここ)だ。

 昔に男と色々とあった辺りから、髪を金色に染め、エメラルド色のコンタクトレンズをいれたとか、どうとか。……もしもそうなら、変わりたいと、思ったからなのか。