ハイカロリーラヴァーズ

 大通りをしばらく走ると、交差点で左折する。前もって、マンションの場所は教えてあって、大体の道は分かるようだ。

 次第に、あたしにも分かる道路を通るようになった。ここまで来れば、あとは案内もできる。もうすぐ着く。

 そこの角を曲がって、そう指で合図した。ウインカーが点滅し、バイクが傾いて曲がる。この感覚が怖いんだけど……でもがんばるわ、あたし。

「あ、ここ。ここ!」

 マンションの前まで来たので、大きな声で呼びかけた。ゆっくりと止まるバイク。

「ここ?」

「そう。ここの3階」

 青司は「降りて」と言ってあたしを降ろすと、道路にある電柱のそばまで走り、そこへ駐車した。あたしはそこへ駆け寄る。

「ちょっとだけだから、路駐してても大丈夫だろ」

 マンションに駐輪場はあるんだけれど、そこに駐車するまででもない。すぐ帰るんだから。

 ヘルメットを取りながら、マンションへ向かう。エレベーターに乗って、3階へ。

 降りて通路を静かに歩く。何年も何度も繰り返し通った順序だ。いつもこうだった。

「ここ……」

 黒いドア。青司は帰って来ているだろうか。時間は21時半。残業が長引けば、これより遅くなることもあったけど……今夜はどうだろう。

「俺は入らない方が良いだろ。あっちに居るから。なんかあったらすぐに呼んでよ。声が届くところに居るから」

「うん」

「長居はしないこと。あんまり長かったら、突入するから」

 もう、たぶんなにも無いと思うんだけれどね……。一応、用心はしたい。青司が居ることで、心強い。