ハイカロリーラヴァーズ


 とりあえず、お茶を飲んで過ごし、21時になったところで、外へ出た。1時間あったら、夕飯食べられたんじゃない? なんでふたりとも気付かないんだろう。

 ブオン、ドルドルドル……。

 バイクのエンジン音が静かな住宅街に響く。駐輪場に停まっているのは見てたけど、動くのは初めて見る。けっこう音が大きいのね……そしてデカいのね……。

「これ、なんていうの?」

「シャドウのナナハン」

「ナナハン」

「750cc。ホンダだよ」

 白っぽくどっしりとした車体。青司がバイクに乗ることも、これが置いてあることも知ってたけれど、後ろに乗せて貰うのは初めて。

「乗って。ちゃんとしっかりつかまっててよ」

「はい!」

 ヘルメットを被り、タンデム用ステップに足をかけて跨がり、青司の腰に手を回す。落ちないようにしっかりと。リュックはちゃんと背負ってる。準備OK。

「しっかりつかまってろよ」

 もう一度念を押すように言われて、バイクは走り出した。

「ふわああああ」

 きっと青司はいつもよりゆっくり走ってくれているんだと思う。でも、怖い。怖いよ! 太股に思いっきり力が入ってる。腕にも、全身に力を込めている。
 信号機で停車した時に、後ろから話しかけた。

「初めて! バイクの後ろに乗るの!」

「おお」

「怖いけど楽しいかも。でも怖い」

「華さんのバージン奪った!」

「ちがう!」

 青信号に変わって、また動き出すバイク。なにを言ってるんだこの男は。
 シールドのあるジェットヘルメットに、夜風がぶち当たっている。つかまっている青司の背中が温かい。少し汗ばんでいるように思う。