「いいよいいよ。お湯沸いたら食おうぜ」
ただいまの時刻。21時半を少し過ぎたところ。3時間くらい寝てたな……夜、眠れないんじゃないの。
「お椀持ってってー」
「はいはい」
ソファーから立って、キッチンへ行く。ケトルからお湯が注がれたお椀を持って、テーブルへ入った。お箸は……割り箸あるね。
「食べよ。お腹空いたでしょ」
「今日は真面目に授業受けてたからねー……腹ぺこ」
「今日はって、いつも真面目に受けてください」
「へーへー。いただきまーす」
まったくもう。あたしは味噌汁のお椀を持ちながら、青司の顔を見た。もう2浪してるっていうのになぁ。ちゃんと考えているのかしら。
そのうち一度、ちゃんと話をしたい。成人しているとはいえ、2浪で予備校に通う身なんだし。
「アパート、決まって良かったな」
エビフライをくわえながら、青司が言った。
「うん。ここからだって近いから。あたしは自転車で仕事に行けるし」
「チャリ持ってんの?」
「ううん。買おうと思ってる」
近くに自転車屋、あるかな。調べないといけないな。
「俺のやるよ。乗ってないし」
「え? いいの? ていうか自転車持ってたの」
バイクに乗ることは知っていたけれど、自転車も持ってたんだ。バイクあったら乗らなくなるよね……。
「明日帰ってきたら、錆取りとかやって、綺麗にするよ」
「わぁやったね。嬉しい。ここの駐輪場にあるんだね。ご飯食べたら見てきていい?」
「赤いのだから、女性が乗っても良いと思うよ」
赤だって。この際、色なんかなんでも良いんだけど、自転車貰えるなんてラッキーだ。青司に感謝しなくちゃ。色々助けて貰ってるし。
「青司が居なかったら、あたしここまでできなかったかもしれない」
「そう? そりゃ良かった」
「感謝しなくちゃね」
「じゃあその感謝はベッドでお願いします」
「黙って食べて。喋らないで」
「華さん冷たい」
ちょっと甘やかすとすぐこれなんだから。
「16日から入れるから、荷物は少しずつ持って行くね」
「手伝うよ」
「ありがとう」
今日はお弁当だけど、明日の夕食はちょっと頑張って作ろうかな。部屋が決まったお祝い。自分のだけどね。
ご飯を食べたら、自転車を見に行きたかったのに、結局ベッドに引きずり込まれてしまった。



