「あ、これ」
右手薬指を摘んで、青司がへの字口をする。ああ、源也から貰った指輪……これがどういう指輪か知っている青司にとって、面白くないかもしれない。
「俺が新しいのを買ってあげる」
「あはは、ありがと」
「これは、外す」
手を取ると、青司はあたしの右手薬指を口にくわえた。器用に唇で指輪を外していく。外し終わると、指輪をくわえて、輪に舌を入れて笑った。
「どうしようね」
「こうする」
そう言うと、青司は指輪を口に含んで、飲み込んでしまった。止める隙も無かった。
「え! ちょっとちょっと!」
「いいだろ」
「お腹壊すでしょ!」
「うんこで出るよ」
「酷いひとだな」
「まぁな」
これは……トイレで探すのも嫌だ。たぶん出てくるとは思うけれど、後日ちょっとでも体調が悪かったりしたら病院に連れて行こう。
源也に買って貰った指輪。思い出のある指輪。青司が声をかける判断をした指輪。
もう、青司の目に真っ直ぐ見られても、嫌だと思わない。後ろめたくもない。あたしも、青司を真っ直ぐに見ることが出来る。
「今日は、もうゆっくり休むんだ」
「そうだね。明日仕事だし」
「一緒に行く?」
「馬鹿」
青司はソファーで寝ると言って聞かなかったから、ひとりでベッドを借りた。明日、体が痛いって言うんだろうな、きっと。
今日は、とても疲れた。ベッドに体が沈んでいく。少しだけ胸がチクチク痛む。この痛みも、時間が忘れさせてくれるんだろう。そう思いたかった。



