濡れたままの髪から水滴が落ちた。青司は立ち上がって、あたしのTシャツに手をかける。優しく、とても優しく。乱暴にはしなかった。あたしは、床を見たまま、されるがままになっていた。お風呂上がりだったから、下着は付けていない。いつも、裸で抱き合っていたくせに、恥ずかしくて仕方が無かった。
「……酷いな。痣になってる」
「……大丈夫だから」
「ここも、ここも……」
青司の指が触れると、痛みが走る。眉間に皺を寄せていると、頬を温かい手で包まれた。
「クソ……本当に……ひとりで行かせるんじゃなかった」
とても悔しそうに、青司は声を絞り出した。思わず、震えが走る。
「ごめん、青司」
「……ちくしょう」
「いいの。これがあたしの罰。青司を苦しめた、罰なんだ」
いまにも泣き出しそうな青司の顔。あたしはそっと、顔を寄せて頬にキスをした。
「後悔、してないよ」
「華……」
「ちゃんと、終わらせて来たから。源也とのことも、青司のことも、後悔してない」
泣かない。だって、あたしを大切にしてくれる青司が、こうしてあたしを抱き締めてくれるんだ。あたしは泣かない。
「はは……俺のこと後悔されても困るけど」
青司は、泣き笑いの顔になった。あたしが泣かない分、きみが泣いている。
「だって、そうじゃなかったら華さんと出会えなかった」
「そうだね」
青司の背中に腕を回した。心音が聞こえるよ。嬉しい音だよ。生きてる音だ。
「明日から、部屋探さなくちゃ」
「ここに居れば良いのに」
「そういうわけに行かないよ。大丈夫。歯ブラシ2本用意しとくから」
そんな悲しそうな顔をしないで。あたしは大丈夫。これから、ふたりで笑って行こうよ。
青司の頬を包むあたしの手を、大きな手が包む。



