白いマグから甘い湯気が立っている。ひとくち付けると、唇にしみた。
「あいたた」
口が切れているらしい。鏡を見る暇なんか無かったから、酷い顔のまま電車に乗っていたんだろう。
「カップとか茶碗とか、買っておくから。あんまり食器も無いし、買い足さないと」
青司はコーヒーを飲んでいる。
「なんで?」
「華さん、ここに居ろよ」
「ああ、すぐ部屋探すから。ちょっとだけ置いてね。荷物だってまだ……」
「ここで暮らせよ!」
急に声を険しくするから、少しびっくりしてしまう。ここで暮らせって、いくらなんでもそれはできないことだった。
「ごめん……ひとりで行かせるんじゃなかった」
「青司」
「乱暴されたんだろ。見れば分かる」
青司の勘は当たっていて、でも自分からそう言い出せなかった。できれば気付かないで欲しかった。
「大丈夫だよ。平気」
「やっぱり華さんの彼氏は最低だ」
「青司」
「クソ男め」
綺麗な顔で凄むと、余計に怖い。変な気を起こさないかと心配になる程だった。
「あたしは大丈夫だから、ね。もう源也のもとには帰らない。終わったの」
「……ほ、本当?」
今度は情けない顔になった。怒ったり弱気になったり、忙しい人だ。



