ハイカロリーラヴァーズ


「血が出てるし、ほっぺたが腫れてる」

 血……そう言えば、口の中で血の味がする。それすら気付かないほどにマンションから出ることしか考えていなかった。

「大丈夫だよ……」

 深くシートに沈んで、怒ったような顔をする青司に、それだけ声をかけて、あたしも背中をもたれた。


 くねくねと走って、ほどなく青司のアパートに到着した。青司はふたつの荷物をひとりで持ってくれ、部屋へ運んだ。こういう時の男手ってとても頼りになる。


「入って。座ってて。着替えと風呂用意するから」

「あ、着替えてきたから、大丈夫だよ」

「そう。まず風呂に浸かってゆっくりしなよ」

「ありがとう」

「それからでも遅くない。明日は仕事でしょ」

「うん」

 バスルームから、浴槽を洗う音が聞こえる。それからスイッチの音。あたしは黙ってソファーに座って、青司が行ったり来たりするのを見ている。キッチンでケトルの電源を入れている。マグを出して、ココアのスティックを用意していた。夏なのに、熱いココアか。でも落ち着いて良いのかもしれない。

「冷たい方が良いかもしれないけど、体冷やすのも良く無さそうだから」

「ありがと……」

 それからクローゼットからバスタオルを取り出すと「あっちに置いておくから」とバスルームへ行き、そして戻ってきた。青司も座れば良いのに。もう良いよ。

 それから沸いたお湯でココアを作ってくれ、チョコまで用意してくれて、やっと青司の動きが止まった。せわしないなぁ。甘いのばっかりじゃん。

「そんなバタバタしてたら、あたしも落ち着かないんだけど」

 笑いながら言うと、青司は苦笑して隣に座った。