体が言うことを聞かないけれど、痛みはおさまってくるだろう。部屋を出て、歩いているうちに。
もっと、別な愛し方があったのかもしれない。もっと、好きの伝え方があったのかもしれない。泣いてすがれば、あたしを見て欲しいって言えば良かったのかもしれない。でも、できなかった。すべては、遅すぎた。
あたし達の愛は、切なくて、美しくて、狂ってる。
横断歩道で信号待ちをしていると、スマホが振動した。両手を塞いでいる荷物を一度地面に置き、ポケットに入れておいたスマホを取り出す。青司からの着信だった。
「……もしもし」
「もしもし? 華さん? いまどこに居るの?」
そうか。近くに青司が居るんだった。忘れてた。ごめん青司……。
「マンションを出て来たところ。もうちょっと歩くと駅に着くよ」
「俺、いま駅東口のカフェに居たんだけど」
聞くと隣の駅だった。あたしの最寄り駅付近には、入って待てるような場所が無いんだよね……。
「ああ、じゃあそっちに着いたら連絡するよ」
「大丈夫なのか?」
「うん。なんとか……行けるから」
信号が青に変わる。でも電話をしていて荷物が持てないから、渡れない。
「なんかあったのか?」
「ううん。大丈夫だよ。待ってて」
鏡を見ていないから、自分の顔がどんな風になっているのか分からない。会ったら、青司はびっくりするだろうな。怒るかもしれない。でも、終わったの。
「華さん」
「ん?」
「好きだよ」
「……うん……」
あたしを救い出してくれる青司のもとに、行く。真っ直ぐ行く。もう迷いも足枷も無い。
永遠に続くものなど無いのは分かってる。でも、あたしはそれを信じるしか無いんだ。
電話を切る。横断歩道が再び青になったのを確認して、渡りだした。真っ直ぐ行く。青司に向かって、真っ直ぐに。



