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大切なものは無くしてから、その大きさに気付く。そんなの腐るほど耳にしてる。みんな、暗い顔をしてそう言うんだ。
涙ながらに「やっぱり一番だった」って言うの。大切にしなかった自分が悪いのに。そう思って、自分に浸ってるだけよ。
馬鹿げてる。なのに、すぐには気付けない人間の鈍感さ。そんなもの、いらないのに。その時に気付けば、こんな風に壊れなくても済むのに。
源也が好きだった。大好きだった。でも、ほころびに気付いた時にはもう遅かった。
途中でベッドに連れて行かれたのがせめてもの優しさなのかな。乱暴にされながらも、泣きそうになるのをずっとこらえていた。泣いたら、負けだと思ったから。
源也の体重が離れて行き、しばらく動けなかった。
ベッドの端に座った上半身裸の源也。たぶん煙草を吸いたいと思っているはずだ。
「気が……済んだ?」
縛られた手はいつの間にか解かれて、自由になっている。あたしは体を起こして、源也の背中に話しかけた。体のあちこちが、痛い。
「荷物、大きなものは近いうちにまとめるから……」
散らかって破かれた服は、捨てよう。クローゼットから下着と服を出して、ゆっくり着替える。荷物を詰めるのが途中までだったバッグを取る。とりあえず、ここまでで良い。このまま片付けを続けるわけにはいかない。
シャワーを浴びたかった。汚れたままで外に出るのが嫌だった。でも、できない。もうここには居られない。
「じゃあ……行くね」
まだ動かない源也を振り返る。うなだれて、床を見ていた。



