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一緒に住んだ時間。あなたと一緒に居た時間。そこから抜け出す。自分で壊しに行くんだ。たくさんの代償があるだろう。罵られるか、笑われるか。罵倒されるか。
決着を、付けなくちゃいけないんだ。この日々に。
無断外泊をした。源也は怒ってる、きっと。連絡は入れていないし、来てもいない。もう、あたしがどこでなにをしていようが、それすらどうでも良いのかもしれない。
「今日は仕事に行ったはずだから、帰ってきたら……話すよ」
「ひとりで、大丈夫?」
青司が駅まで送ってくれた。別れる時、不安を顔に貼り付けて、青司があたしの手を掴んだ。
「大丈夫。ごまかさないで、ちゃんと、話す」
駅の喧騒は、ふたりを包む。青司の手は温かくて、ひりひりと伝わってくる。
「ちょっと、心配だけど」
「話したら、連絡する」
「家、どこだっけ」
あたしは青司の部屋に行っているのに、彼はあたしの家を知らない。よく考えたら、そうだったね。
「区役所のほう……」
「じゃあ、そのへんに居るよ。なんかあったら困るし」
ファミレスとかカフェとかあるか調べるわーと、スマホを取り出した。
なにかって……なんでそんなことを言うのかなと考えたら、ああそうか。優しいな。こんな優しさも、今までは大切にしていなかったかもしれない。自分の中の優先度が低かった。
「青司」
「なに」
いままで、本当に。
「ご……ごめんね……」
あたしはこんなに脆かったんだっけ。人前で泣いたりしたくないのに。知らない人もまわりにたくさん居るのに。
下を向いて涙を拭うあたしの手を、青司が優しく握ってくる。
「いいよ、俺も同じだよ。ごめん」
自分達の枝分かれした道の1本を、どこかで失敗してしまったんだ。間違ったんだ。
「またね」
「うん」
全部終わったら、また。また青司に会いに行く。全部、あたしの中の決着をつけたら、また。
改札を抜けて、ホームへ歩き出した。背中に青司の想いを感じながら。



