「……」
前に回された腕をさすってやる。あたしは青司の言葉に何も答えられなくなっていた。帰って1人で寝るのは、あたしも嫌だったから。
このままじっとしていれば、明日が来る。源也は帰ってこないあたしをどう思うだろうか。また、怒るのだろうか。
このまま一緒に居れば、目を塞がずに青司と抱き合っていられる。そう思うのは幼稚で自分勝手かもしれない。押し寄せる青司の熱に浮かされている。自覚はある。
再び脱がされる服は、きっとしわくちゃになるんだろう。それさえも気にしたくなかった。
目隠しして、青司の肌を源也のものとしていた。それがいつからか、そうじゃなくなっていたんだ。気付かないふりをしていたんだ。
家に戻っても、目から口から青司のことが漏れ出すんじゃないかと怖かった。見ないようにしていた。それがいつからか、見えないことで研ぎ澄まされた感覚が、青司を細胞が記憶した。
「青司」
あたしは、いまにも泣き出しそうな青司の頭をそっと抱く。こんなこと、自分からしたことが無かった。
「あたし……」
「……」
「あたしを、連れ出せるの」
青司が、必要だ。
泣くのを我慢しているんだろうか。体に力が入っている。あたしは我慢しないで泣けるけど、青司は男だから、我慢している。泣いているあたしを青司は抱きしめていてくれたんだから、泣くのを我慢する青司を抱きしめてあげるんだ。
そっと胸を離すと、青司の頬を手で包む。まつ毛が少し濡れているような気がする。薄暗い部屋でも、表情は分かる。
「あたしを、救ってくれるの……?」
酷い女だと思うだろう。きっと、誰もが。
頭の片隅にある源也を消したい。目を塞がずにちゃんと青司を見るんだ。薄暗く四角い部屋でぼんやりと自ら光る2人の目。光が届かない底にある、歪んだ想いだとしても。



