少し電話口のガヤガヤが静かになった。外に出たのかな。外でファンも居るだろうになんかもう不用意にそんなうろうろして、こいつは。
「だめ、来て。来てくれないと困る。俺が困る。絶対、迎えに行くからそこに居て」
「は?」
「そこに居て」
「ちょっと」
「いいから」
「青司ってば、あたし帰るよ」
電話を切ろうとした。バッグとトレーを持って、立つ。もう、つき合ってられっか。
「ほら、行くよ」
スマホから耳を離したのに、青司の声が近くから聞こえる。おかしいな。爆音で耳がおかしくなったのかな。
「華ちゃん」
「え、青司!」
後ろに息を切らした青司が立っていた。は? なんで来たの。普通、来る?
「なにやってんの! 戻りなよ」
「だからぁ、打ち上げ行こうよ。関係者だけしか来ないから」
「あたし関係者じゃないよ。行けるわけないでしょ」
「いいの。インビテ配ってるんだから、関係者。それで入ったでしょ?」
「そうだけど! うろうろしないでさっさと……」
「いいから来いってば。さぁさぁ祝杯!」
店内で押し問答をするわけにもいかなくて、トレーは青司が片付けてくれて、手を引かれてそのまま打ち上げ会場まで連れて行かれた。



