ステージ上には4人。「crimson」という4人組みバンド。真ん中奥にドラム、かみてにギター、しもてベース。その真ん中に、居た。ギターを持って、マイクスタンド越しの、横顔。そして、ゆっくり正面を向く。
青司だった。青司。でも、あたしが知っている青司とちょっと違う。
う、歌うのか。バンドでのポジションも聞いたことが無かった。歌うのか。ギターは部屋にあるから弾くんだろうなって思っていたけれど、ギターボーカルだったのか。コーラスくらいするのかと……メインか。歌うのか。
いや、なんだろう。音楽をやっているし、当然、声も商売道具だと思うじゃない。知らなかった。
初めて分かる事実に目を奪われていると、大きく息を吸うと伸びやかで気持ちの良い声がマイクで拡大された。
「あ……」
思わず発したひとり言は、音にかき消される。
あたしの心臓は、3倍速くらいに跳ね上がった。青司の声だ。
低く高く、フロアを這い回る声。バンド演奏によく乗って、ファンの耳に届いているんだと思う。
青司の声だ。でも、聞いたこと無い、知らない青司の声だった。ピックを持った右手でマイクを持って、そして弾きだして。ベースともう1人のギターが位置を交代してファンを煽ったり、リズムに体を揺らしたりしてプレイしている。その度にファンがギュウギュウになる。
凄い。みんな聞いているよ。聞き惚れている。漏れなく、あたしも。全部の視線がステージに行っている。
Tシャツにデニム、スニーカーというような服装のメンバー。動きやすさ重視といった感じだ。青司は風呂上りそのまま髪は自然乾燥で出てますって感じだけど、それが自然で良いのかな。ベースは短髪、あっちのギターはツンツン頭。ドラムは肩までの長い髪。青司だけが茶髪。
次から次へと音と声の波。足がふわっと浮いてしまいそうだった。アップテンポ、ゴリゴリのロック、バラード。
曲と曲の合間のMCは、ほとんどベースの人が喋っている。青司はあまり喋りは得意じゃないらしい。普段喋るのと、こういう場で話すのは、ちょっと違うのかもしれない。口数が少ない人ではないのに。
話を振られると、まるで拷問でも受けているような顔をして、アーとかウーとか言って頑張って喋っている。ベースの人が居なかったらどうなっているんだろう、このバンド。
「あーでは、次は新曲です。できました。初お披露目だよ」
そう青司が言うと、ファンがおおーと声を上げる。
「来月リリースになります。予定ね」
新曲だって。授業さぼって、曲作りとレコーディングしてたわけね……。



